貧しき人びと

ドストエフスキー

 ごく初期の作品。地の文はなく、男女二人の文通により話が展開する。手紙から実際の出来事や心情を想像する楽しさがある。やり取りに慣れてきて硬い感じのした文面が柔らかくなり、それまででは言えなかったこともだんだん伝え合えるようになる。敢えて言わないようにしていた本心が文章の間から透けてくる。

 手探りで書いていた手紙だけれど、今は自分なりのスタイルが出来て来ましたと言うくだりが好きだ。